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【第1部】 第43話 ピンチ!①

last update Last Updated: 2025-08-10 19:01:08

 あれからずっと、ヘンリーは私を避け続けている。

 もちろん対応がそっけないのも継続中。その理由も未だに不明。

 さらには、結構精神的に辛いことがあって。

 シャーロットと仲良く過ごすヘンリーの姿を目撃することが多くなっていた。

 見せつけるようなその姿に、私はただ毎日耐え続けるしかない。

 居間でいつものように皆でご飯を食べていると、

「はい、あーんですわ。ヘンリー様」

「あーん」

 シャーロットがすくったご飯にかぶりつくヘンリー。

「美味しい、ありがとうシャーロット」

「うふふっ」

 新婚のように仲良くじゃれ合う二人。

 その様子を目の前で見せつけられた私の血管は、切れそうなほど浮き出ているに違いない。

「おい、おまえたち、いい加減にしろよ」

 龍がヘンリー達を睨み凄んだ。

「いいから」

 私が制すると、龍は納得していないように顔を歪め、口をつぐんだ。

 これが最近のやり取りの定番だ。

 幾度となく私の目の前でいちゃつくヘンリーとシャーロットに、龍の堪忍袋の緒が切れたのが昨日。

 それまでも幾度となく二人に向け、注意はしていた。

 それでもやめない二人に、龍がとうとうキレた。

 ヘンリーに殴りかかろうとした龍を私は止めた。

 そんなことしたからって、何も変わらない。ヘンリーの気持ちが変わることはないとわかっているから。

 なんでこんなことになってしまったのか、未だにわからないけれど。

 私はもう疲れていた。

 ヘンリーのことがわからなくて、彼のことをあきらめようとしている自分がいる。

 あんなに私のことを好いてくれていたヘンリーは、もういない。

 もう元には戻れない……なぜかそんな気がするのだ。

「龍、行こう」

 私は立ち上がると、居間を出ていく。

「お嬢、どこへ?」

 龍に問われ、ふと考える。

 とくに目的があったわけではない。ただ、ここから
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